平成28年度税制改正により、一定の要件を満たす譲渡制限付株式については、法人税法上の事前確定届出給与の範囲に含まれることとなり損金算入が可能となりました。特定譲渡制限付株式は、会社が役員に対して報酬債権を付与し、役員から報酬債権の現物出資を受けるのと引き換えにその役員に対して一定期間の譲渡制限が付された株式を交付する際の株式を指します。
その他、税制改正に伴い、損金算入の対象となる利益連動給与の算定基礎となる指標として、営業利益や経常利益等に加えて、ROEやEBITDA等の指標も含まれることが明確化されており役員報酬の支払方法が柔軟化されております。
経済産業省が公表した「攻めの経営を促す役員報酬~新たな株式報酬(いわゆるリストリクテッド・ストック)の導入等の手引~」には、譲渡制限付株式を交付後は、現物出資された報酬債権相当額のうち、役員が提供する役務として当期に発生したと認められる額を対象勤務期間(譲渡制限期間)を基礎とする方法等の合理的な方法で算定し費用計上することとされております(但し、リストリクテッド・ストックを対象とする具体的な会計基準は未公表)。
取締役の報酬等として株式を無償交付する取引のうち、契約上、株式の発行等について権利確定条件が付されており、権利確定条件が達成された場合に株式の発行等が行われる取引を事後交付型と定義している。
事後交付型においては、各会計期間の報酬費用の認識と測定を行い、対応する金額を新株の発行が行われるまでの間、貸借対照表の純資産の部の株主資本以外の項目に株式引受権として開示することとされている。
特定譲渡制限付株式が付与される役員に対しては、特定譲渡制限付株式の譲渡制限が解除された日に、同日における特定譲渡制限付株式の価額(譲渡制限解除時の時価)にて給与等として課税されます。
法人税法上の損金算入時期は、役員に給与等課税事由が生じた日(特定譲渡制限付株式の譲渡制限が解除された日)の属する事業年度となります。
損金算入される金額は、譲渡制限が解除された特定譲渡制限付株式の交付と引換えにその役員により現物出資された金銭報酬債権等の額です。
税法上の特定譲渡制限付株式は、以下の要件を満たす株式とされております。
① 一定期間の譲渡制限が設けられている株式であること
② 法人により無償取得(没収)される事由(無償取得事由)として勤務条件又は業績条件が達成されないこと等が
定められている株式であること
③ 役務提供の対価として役員等に生ずる債権の給付と引換えに交付される株式等であること
④ 役務提供を受ける法人又はその法人の株式等の全部を直接に保有する親法人の株式であること
また、損金算入が可能となる事前確定届出給与に該当するためには以下の要件を満たす必要があります。
①支給額の確定要件
法人が、その役員から職務執行開始当初に一括して確定額の報酬債権を現物出資され、その引換えに譲渡制限付株式を交付し、一定期間の勤務状況や業績状況に応じて譲渡制限を解除するもの
②交付に関する要件
職務の執行の開始の日(原則、定時株主総会の日)から1 月を経過する日までに株主総会等(株主総会の委任を受けた取締役会を含むものと解されます。)の決議により取締役個人別の確定額報酬についての定め(その決議の日からさらに1 月を経過する日までに、その職務につきその役員に生ずる債権の額に相当する特定譲渡制限付株式を交付する旨の定めに限ります。)がされ、その定めに従って交付されること