財産評価基本通達は、取引相場のない株式である種類株式が発行されている場合の同族会社等の判定方法を示しているものの、取引相場のない株式である種類株式の評価方法については明示しておりませんが、原則的評価が適用される同族株主等については、以下の類型化のもとそれぞれの株式の取扱いが公表されている。
①配当優先の無議決権株式
②社債類似株式
③拒否権付株式
1.類似業種比準方式により評価する場合
財産評価基本通達180に定める計算式に基づき、株式の種類ごとにその株式に係る配当金額を「1株当たりの配当金額」として採用する。
2.純資産価額方式により評価する場合
純資産価額方式における評価においては配当の多寡が評価の要素として考慮されていないことから、配当優先の有無に関わらず財産評価基本通達185(純資産価額)の定めにより評価を行う。
原則として、議決権の有無を考慮せずに評価することとされております。但し、議決権の有無により株式の価値が異なる点に配慮する観点から、以下の条件を満たす場合には納税者の選択により原則的評価により評価した価額から5%部分を控除した金額により評価することも可能となっております。なお、無議決権株式の評価において控除した5%部分の評価については、議決権株式に加える必要があります。
・当該会社の株式について、相続税の法定申告期限までに遺産分割協議が確定していること
・当該相続又は遺贈により、株式を取得した全ての同族株主から、相続税の法定申告期限までに、当該相続又は遺贈により同族株主が取得した無議決権株式の価額について、調整計算前のその株式の評価額から5%を控除した金額により評価するとともに、当該控除した金額を議決権のある株式の価額に加算して申告することについての届出書が所轄税務署長に提出されていること。
・相続税の申告にあたり、取引相場のない株式(出資)の評価明細書に次の算式に基づく株式の評価の算定根拠を記載していること。
(調整計算式)
無議決権株式の評価額(単価)= A × 0.95
議決権のある株式への加算額= ( A × 無議決権株式の株式総数) × 0.05 = X
議決権のある株式の評価額(単価)= ( B ×議決権のある株式の株式総数 + X ) ÷ 議決権のある株式の株式総数
A:調整計算前の無議決権株式の1株当たりの評価額
B:調整計算前の議決権のある株式の1株当たりの評価額
社債類似株式とは、以下の条件を満たす株式と定義され、その経済的実質が社債に類似していることから社債と同様の評価方法により評価を行います。
但し、株式であることから既経過利息に相当する配当金の加算調整については行いません。
・配当金について優先して分配する
・残余財産の分配については、発行価額を超えて分配は行わない
・一定の期日において、発行会社は本件株式の全部を発行価額で償還する
・議決権を有しない
・他の株式を対価とする取得請求権を有しない
会社法108条1項8号に定められた拒否権を有する株式は、拒否権の有無に関わらず普通株式と同様に評価を行います。