消費税における簡易課税制度とは、その課税期間における課税標準額に対する消費税額を基にして仕入控除税額を計算する方法です。
具体的には、基準期間における課税売上高が5,000万円以下の課税期間について所定の選択届出を提出した場合、その課税期間の課税標準額に対する消費税額から売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した金額に「みなし仕入率」を乗じた金額を仕入控除税額とみなし、消費税の納付税額を計算することができるという制度です。
この「みなし仕入率」は、平成27年4月1日以後開始の事業年度より、以下の六つの区分となっております。
業種 | 料率 | |
第一種事業 | 卸売業 | 90% |
第二種事業 | 小売業 | 80% |
第三種事業 |
製造業等 (農業、林業、漁業、鉱業、採石業、砂利採取業、建設業、製造業、製造小売業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業) |
70% |
第四種事業 |
飲食業 その他の事業 (※加工賃等の料金を受け取って役務を提供する事業含む) |
60% |
第五種事業 | 運輸通信業、サービス業(飲食業除く)、金融業、保険業 | 50% |
第六種事業 | 不動産業 | 40% |
なお、この制度の適用を受けるための選択届は、原則としてその適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに管轄の税務署長に提出しなければなりません。また本制度をいったん選択した場合は、2年間は継続して適用しなければならないこととされています。
(1種類の事業のみを営む事業者の場合)
仕入控除税額 | = | ( | 課税標準額に対する消費税額 | - | 売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額 | ) | × | みなし仕入率 |
(複数の事業を営む事業者の場合)
仕入控除税額 | = | ( | 課税標準額に対する消費税額 | - | 売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額 | ) | × | みなし仕入率(※) |
(※)× | 第1種事業に係る消費税×90% | + | 第2種事業に係る消費税×80% | + | 第3種事業に係る消費税×70% | + | 第4種事業に係る消費税×60% | + | 第5種事業に係る消費税×50% | + | 第6種事業に係る消費税×40% |
第1種事業に係る消費税額 | + | 第2種事業に係る消費税額 | + | 第3種事業に係る消費税額 | + | 第4種事業に係る消費税額 | + | 第5種事業に係る消費税額 | + | 第6種事業に係る消費税額 |
(1) 2種類以上の事業を営む事業者で、1種類の事業の課税売上高が全体の課税売上高の75%以上を占める場合には、その事業のみなし仕入率を全体の課税売上げに対して適用することができます。
(2) 3種類以上の事業を営む事業者で、特定の2種類の事業の課税売上高の合計額が全体の課税売上高の75%以上を占める事業者については、その2業種のうちみなし仕入率の高い方の事業に係る課税売上高については、そのみなし仕入率を適用し、それ以外の課税売上高については、その2種類の事業のうち低い方のみなし仕入率をその事業以外の課税売上げに対して適用することができます。
(3) 2種類以上の事業を営む事業者が課税売上げを事業ごとに区分していない場合には、この区分をしていない部分については、その区分していない事業のうち一番低いみなし仕入率を適用して仕入控除税額を計算します。
消費税における簡易課税制度と原則課税の選択が可能なケースにおいて、一般的には以下の場合に簡易課税制度を選択することで消費税の納税負担を抑えることができる傾向にあります。但し、実際の適用にあたっては専門家による綿密なシミュレーションを実施されることが望まれます。
(A)簡易課税制度におけるみなし仕入率よりも、実際の課税仕入率が低いケース
(B)非課税売上の割合が多く、比例して、仕入のうち非課税売上に係る仕入の割合が高いケース
(C)原価や販管費において、給料や法定福利費等の割合が高く課税仕入の割合が低いケース